連載コーナー




 

 

 

新 四 季 雑 感 (23)

樫村 慶一

肉、魚と

つづけば、

野菜の話も

しないと・・・

 

 

 いきなり話が大きなものになってしまうが、今地球上のあらゆる種族の人間の数は、80億人を越したと聞いた。それが100億になると、食料の取りっこで戦争になると言われる。あちこちの、局地戦争などは小さなことだというわけだ。そして強いものが勝つのだろう。誰が強いのか知らないが、k-unetの会員諸氏は、恐らくその悲劇は見ないですむであろうが、とりあえず、平和な話題に戻りたい、それも極端に小さな話題に。

2007.9.4(火)朝日新聞夕刊より

 日本は農業国と言われているので、どこでも野菜はとれる。東京を取り巻く6県でできる特産野菜(果物も含め)のひとつかふたつを、半分聞き伝えと常識で判断すると、千葉の落花生(野菜ではないのかな?)と西瓜、茨城のサツマイモ(薩摩芋神社もある)、竹の子、栃木のかんぴょうとかイチゴ、群馬のコンニャクとキャベツ、埼玉の長ネギ、神奈川の、って来て、さて困った、神奈川県の特産野菜ってなんだろうと考え、すぐ思い出した!三浦大根だ。このへんまでは、大体常識でご存じの方も多いであろう。そして、”とり”はいよいよ東京であるが、東京に野菜などとれるところなどない、と考える人がいたら、とんでもないことで、昔から、江戸は野菜の豊富な国だったのだ。

 もともとは、江戸にあった地元の野菜に、参勤交代で諸国から上京してきた武士達が、地元野菜の種を持ってきて栽培し、品種の改良を経て、「江戸の野菜」として定着させたのが江戸野菜の起こりである。今でも練馬大根は有名だし、その他にも、おでんの材料程はそろわないにしても、結構あるものである。2022年12月末の時点で、農協中央会に認められた、「江戸東京野菜」は52品目あると言われている。江戸川区の小松菜、練馬・亀戸の大根、千住の葱などは有名である。これらの他にも多摩地域を含めた、江戸東京野菜のリストを造ると、下記のように多彩なものになる。

「足立区」

千住一本葱、しんとり菜(1970頃から栽培が盛んになった新種の菜、生食ができ加熱しても歯ざわりがよい)、つまもの(紫芽、あさつき、木の芽、穂じそ、つる菜、鮎たで、芽かぶ)

「荒川区」

二年子大根、谷中生姜、青茎三河島菜、三河島枝豆

「板橋区」

志村みの早生大根

「江戸川区」

小松菜(一の江の小松川地区が発祥の地)、べか葉(菜っ葉)、しんとり菜

「大田区」

馬込半白胡瓜(明治33年に作られた新種の胡瓜、下半分が白くて太くて固めで水分が少ないのが特徴、漬物の名品と言われた)、馬込三寸人参

「葛飾区」

小松菜、金町小蕪、本田瓜(ホンデン・マクワウリ)、しんとり菜、千住一本葱

「北区」

東京長蕪(滝乃川蕪)、滝乃川牛蒡、滝乃川人参

「江東区」

砂村胡瓜、砂村茄子、砂村三寸人参、砂村一本葱、亀戸大根(根は短めで先細りが特徴)

「品川区」

品川蕪、居留木橋南瓜、汐入大根

「新宿区」

早稲田茗荷、淀橋南瓜(内藤南瓜)、内藤唐辛子

「墨田区」

寺島茄子

「世田谷区」

高井戸の節なり胡瓜、大蔵大根(江戸時代杉並辺りで造られていたものが、昭和になって世田谷につたわった)、千歳白菜

「多摩地方」

東京うど(立川)、鳴子瓜(マクワウリ、府中)、高倉大根(八王子)、のらぼう菜(菜っ葉、あきるの)、奥多摩わさび、小金井マクワウリ、拝島葱、たけのこ

「豊島区」

枝なり胡瓜、雑司ヶ谷茄子

「中野区」

東京大越瓜(シロウリ)

「練馬区」

練馬大根

「文京区」

駒込茄子

「目黒区」

真黒茄子(かっては目黒茄子とよばれた)、目黒の竹の子

 2022年になっても種類だけは、ビックリするほど豊富である。しかし、どこで作っているのか分からないし、もう作っていないものも多いのではないかとも思う。それでも、1960年(昭和35年)頃までは都内や近郊で盛んにつくられていたと言う記録がある。しかし、サイズが揃っていないため、流通システムにのせられないとか、現代の食生活になじみにくく、栽培に手間がかかることもあって、急速に減ってしまった。その反動か、それぞれの地元では、小中学校が栽培をするようになり、学校給食や地元の祭りなどで人気がでてきた。
 旧築地市場では、2003年頃から江戸東京野菜の取引をはじめた。土地の名前がついた野菜が多く、地域の魅力を見直す動きにもなっていると言われている。市場では、「京都の人が京野菜を守っているように、江戸の伝統野菜も東京で大事にしていきたい」と語っている。しかし、本当に、食糧不足の時代がきて、東京で野菜を地産地消なんてことになったら、笑い話ではなくなることになるだろう。「かつて、東京でも野菜がつくられていた・・・」という想い出話のうちが花であると思う。 肉、魚、野菜と3回に分けて話してきた食べ物の話は、これで終わり。
4月になって94歳、k-unetの皆さんのために、これからも頑張らなくちゃと思う。

(2024.5.1記 ) 

  

 


 

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